赤木洋一さんの本
手元に赤木洋一さんの本が2冊あります。1冊はすでに持っている『平凡パンチ 1964』。今回購入したのが『アンアン 1970』(ともに平凡社新書)です。この本は発売当時図書館で借りて読んだ記憶があります。
今改めて読み返しています。新しい雑誌「アンアン」を立ち上げるために大変なのですが、なぜかそれ以上に生き生きと愉しそうなのです。これは新しい雑誌を創り上げるための活気のせいか。
なかでも、堀内誠一さんの存在があります。堀内さんがなければ「アンアン」は生まれなかったとも言われています。それだけ堀内さんのAD力がこの雑誌を生んだ原動力になっていました。
この雑誌にはいろいろな人が関わり、また新しいタレントも生み出しました。そうした人間関係も面白い。例えば、松山猛さんのことを著者は次のように語っています。
<ほとんど毎日座っているヒトのなかにいた松山猛は、いつもニコニコと「帰ってきたヨッパライの詞を書いたのです。京都から出てきました。ビンボーです。何か書く仕事はありませんか」とだれかれとなく声をかけていた。何か頼むとヒザの上に原稿用紙を広げて、さらさらと鉛筆で書く。その速さと文章のうまさに感心した。彼はたちまち連載エッセイの書き手となるのだが、すぐファンレターが来てみんなを驚かせた。創刊後しばらく毎日ように姿を見せていたヒトのなかにミュージシャンの慶大生近田春夫もいた。>
この編集部の雑然、騒然とした雰囲気の中に書き手だけではなく、デザイナーも、カメラマンも、スタイリストもいました。例えば原由美子さんのスタイリストの仕事もここから始まりました。
著者はそうした「アンアン」の創世記の時代を回想しながら、時代を切り開く雑誌があったことを書き記しています。この本はいくつもの雑誌が休刊・廃刊する中で、雑誌の意味を考えるための本でもあります。