開高健のノンフィクションベスト5
開高健著『一言半句の戦場 -もっと、書いた!もっと、しゃべった!』(集英社)より、開高さんの薦めるノンフィクション ベスト5をメモしておきます。(p147)
- ジョン・リード『世界をゆるがした十日間』(岩波文庫)*1
- T・ヘイエルダール『コン・ティキ号探検記』(ちくま文庫)
- S・ヘイデン『さまよえる湖』(角川文庫)
- クリストファー・イシャウッド『ベルリンよ、さらば』(角川文庫)*2
- T・カポーティ『冷血』(新潮文庫)
そして日本のノンフィクションでは、明治の桜井忠温の『肉弾』を挙げていました。
この桜井忠温とは誰? そこで、Wikipediaで検索すると、
<櫻井 忠温(さくらい ただよし、1879年6月11日 - 1965年9月17日)は、日本陸軍軍人、陸軍少将、作家。>
でした。また、同名で検索すると、桜井忠温(さくらいただよし)のページがありました。そこを読むと、
<同じ愛媛出身の、『肉弾』と並ぶ戦記ものの一大ベストセラー『此一戦』を著し、後に反戦思想家になった海軍軍人(反骨の軍人)で知られる水野広徳と対比される人物でもある。>
とありました。
この中の水野広徳とは? またWikipediaで検索すると、その人となりが掲載されていました。水野広徳の著書『秋山好古』は司馬遼太郎の『坂の上の雲』などにも影響を与えているといいます。
こうして、開高さんが薦める本から、今まで知らない著者を知ることができます。点から線に、線から面に展開します。こういう本から本へのつながりが読書の愉しみのひとつです。*3
いま読んでいる本、鶴ヶ谷真一著『書を読んで羊を失う』(白水社)のなかに「枯葉」というエッセイがあります。本に挟んである枯葉を取り上げて、永井荷風の文章を引用しつつ、次のようにいいます。
<そうか、あれは紙魚を防ぐためのものだったのか。ひとたびわかってみれば、そんな自明とも思われることになぜ気づかなかったのか、我ながら不思議なほどだった。まことに、ものを知らない人間には知る喜びがある。> (p12)
読書の愉しみはこの「知る喜び」にあります。