野口冨士男『私のなかの東京』

川本三郎さんの最新刊は『東京暮らし』(潮出版社)を読む前に、野口冨士男『私のなかの東京』(中公文庫/岩波現代文庫)を棚から引き出し、読み始めました。これが止まらない。これで何度目読んだろうか。再読しても新しい何かを必ず発見します。

この本は現代から、明治・大正・昭和という時代を回顧し、徳田秋聲永井荷風などの作品と関連させながら、上質で深みのある文学散歩になっています。東京論のテキストとしてもいい、また東京散歩の携帯本としてもいい内容になっています。

この本の解説は川本三郎さん。野口さんと同様に、東京を偏愛し、東京について多くの著作があります。したがって、この人選は最適といえるでしょう。川本さんは野口さんの著作のうち、この『私のなかの東京』と『わが荷風』に大きな影響を受けたといいます。

川本さんの仕事を見ていると、この野口さんの延長線上を歩いているのではないかと思えるほどです。『東京暮らし』にしても、『旅先でビール』にしても、その他の東京論についても同じことが言えるでしょう。

野口さんが亡くなられてから、膨大な日記が発見されました。永井荷風のように日々の生活を克明に記していたのでは。そうであれば、野口さんの「断腸亭日乗」が生まれる可能性も高いと思いますが、どうでしょう。

今日はこのほかに木内昇『東京の仕事場』(ギャップ出版)と柏木博『玩物草子』(平凡社)を読む。

玩物草子―スプーンから薪ストーブまで、心地良いデザインに囲まれた暮らし (コロナ・ブックス 139)