今日の携帯本

広辞苑を読む (文春新書)


携帯本にはいろいろな条件があります。まずコンパクトで持ち歩きに適していること。あまり難しい内容でなく、適度な軽さがあること。関心のある分野の本か、全く無関係の分野の本のいずれか。

そうした本を選び、電車に乗りますが、その中での読書は意外に集中できるのが不思議です。本を読む場所として、電車の中も、一所です。特に30分以上乗る場合には読書に没頭できます。

今日は携帯本がなく、とりあえず一冊手に取ったのが、柳瀬尚紀さんの『広辞苑を読む』(文春新書)でした。急いでいたので、何考えることなく、その本を持ち外出しました。

柳瀬さんの新書は『広辞苑』という辞書を読み解く内容だと思いました。が、『広辞苑』だけでなく、『大辞林』、『大辞泉』、そしてあの有名な齋藤秀三郎著『熟語本位 英語中辭典』まで登場します。

そして著者はひとつの言葉の意味を引き比べ、考えます。言葉の意味は辞書によって諸説あり、それを紹介しています。ヤナセ語の紹介もあり、言葉の多様さに驚きます。またそれらを比べることで辞書の特色も浮き彫りになります。

こうした本が書けるのは、著者の辞書との付き合いがどれだけ深いか。同時に学校を辞して?までして、ジョイスの『フィネガンズ・ウェイク』を訳したからでしょう。

「辞書はジョイスフル」

それは辞引くためのもとだけでなく、読むための本でもあることに気づきます。もっと愉しみながら辞書を読みたいと思います。

柳瀬尚紀さんの本 次の2冊を紹介します。(装画古川タク、装幀菊池信義) ともに博覧強記、軽妙洒脱なエッセイ集です。

言の葉三昧     猫舌三昧