新聞の読書欄から

久しぶりの日曜日。朝刊を読み、いつものように新聞の読書欄に。毎週読書欄を見ていると、多くの本が出版される中から、書評の本を選び、評することが本を読むことよりも大変です。

ある書評家は新聞の読書欄を書くために、気になった本をまず10冊選び、読み、一冊に絞るそうです。その道の専門家ですと、自分の専門分野の中から選択すれば、もっと簡単なのかもしれません。

しかしそれでは面白くないので、書評の場合は専門以外のジャンルの本を取り上げることも多いはずです。専門家が専門外の本の書評を書いた方が読者としては愉しみです。

今日は読書欄からでなく、日経新聞の「詩歌のごだま」を取り上げます。筆者は小池昌代さん。楡久子さんの詩集『水仙と四角い雪』(詩遊社)を紹介して、最後に次のように書いています。

<人間関係が込み合ったいて、それゆえに、交わされる言葉が、洗練され、同時に意味を失い、そのつど解消され流されていく都市とは違い、ここでは人間の感情が、流されずたまってよどみをつくる。そのよどみが、どの詩にも、どんよりとした重みをつけている>

小池さんはこの詩集を読んで、深沢七郎さんを思い出したそうです。都会の詩人と地方の詩人の違いを感じ、都会の滑らかさでなく、田舎のゴツゴツした感触を評価しています。

雑誌から抜け出たようなスマートな女性の素適な手でなく、おばあちゃんのあのざらざらした、シワのあるしっかりした手。

そんな違いがあるのではないでしょうか。こんなことを書いていると、ふと深沢七郎さんの本を読んでみたくなりました。

楢山節考    


また同紙の読書欄の中に、「半歩遅れの読書術」というコラムがあります。今月1月は黒井千次さんが書いていましたが、次月は鴻巣友季子さんが担当するといいます。

鴻巣さんの最新刊『やみくも』を読了して、「道草は喰え、穴には落ちよ」に同感しました。鴻巣さんの書評についてはこのブログで何度か取り上げているので、2月のコラムには大いに期待をしています。