書物の読み方

<この文を書いているわたしは、一九七〇年代のはじめ頃、文学部の一学生として彼のゼミナールに参加した。それは文学における神話原型批評の可能性を問うゼミで、授業時間が終わったあとで何人も連れだって氏の研究室を訪れ、夜遅くまで文学談議に耽ったことがなつくしく思い出されてくる。会うたびに、君、最近の収穫は何かね? と問うのが彼の口癖だった。わたしは答弁に満足したり、満足しなかったりしながら、彼はパイプを片手に本棚から何冊もの洋書を取り出し、じゃこれをさ来週までに読んできてごらん、と卓の上に積みあげたものだ。私も少し年長の高山宏も、こうして書物の読み方を学んだ>p82

このわたしは四方田犬彦さん。彼は由良君美さん。『先生とわたし』(新潮社)の著者と主人公です。この文章は『文学的記憶』(五柳書院)の中の「由良君美を追悼する」からの引用です。由良君美さんはこうして本を読むということを教えていたのです。

その由良君美さんのDNAは高山宏さんや四方田犬彦さんに継承され、また次の世代に伝承されていくことでしょう。このように書物の読み方を学ぶことができたら、もっと本が好きになり、読み方も変わっていたでしょう。

それは叶わぬ夢ですので、週末は四方田犬彦さんの『先生とわたし』を読みたいと思います。

※ブログめぐりで「daily-sumus」の「先生とわたし」を読みました。ちょうど四方田さんの『先生とわたし』が取り上げられており、林さんのコメントも掲載されています。ご覧下さい。(11/18 追記)