今週の書評から

今週の書評欄から2冊を紹介します。チェックする新聞は朝日新聞日経新聞毎日新聞、読売新聞、中日/東京新聞の4紙で、うち毎日、読売、中日/東京新聞はネット情報に基づいています。

まずは7/17朝日新聞からは、田中未知著『寺山修司と生きて』(新書館)です。寺山修司の本や寺山関連の本は出版され、今もなお多くの人が寺山修司について語っています。彼はいまだかつての人でなく、いまとこれからの人なのかもしれません。

この本は寺山の「天井桟敷」の制作・照明と担当し、16年個人秘書をやり、死を看取ることになった女性、田中未知さんが寺山修司を語った本です。自分の職業は「寺山修司」であり、人生の大半を自分のことより彼のために使った、といいます。24年間の沈黙は何であったのか。読んでみたい一冊です。評者は久田恵さん。

次の一冊は小玉武著『「洋酒天国」とその時代 』 (筑摩書房)。掲載は毎日新聞の書評(ネット版)から、評者は若島正さん。これはすでに語り継がれているサントリー(寿屋)の「洋酒天国」という一冊のPR誌をめぐる物語です。

本書は、昭和三十七年に寿屋宣伝部に入社し、すぐに『洋酒天国』の編集に携わった著者小玉武が、直接に見聞きした生々しい現場レポートであり、『洋酒天国』を覗(のぞ)き窓にしてそこからひろがる昭和三十年代という時代の文化を再構成しようとした試みでもある。

初代編集長の開高健。二代目編集長の山口瞳。そしてアンクルトリス生みの親の柳原良平。当時こうした若い才能溢れる人が時代と格闘して、新しい雑誌を生み出しました。「洋酒天国」は61冊で終刊になりますが、それ以降各自の活躍は言うまでもないでしょう。この一冊も読んでみたい一冊です。

寺山修司と生きて     「洋酒天国」とその時代