吉村冬彦『橡の実』

吉村冬彦『橡の実』(小山書店、一九四一年六刷)。時事的な短文が時代を感じさせてたいへん面白い。

林哲夫さんのブログ「daily-sumus」の「橡の実」を読んでいたら、先日読了した高島俊男さんの『座右の名文』(文春新書)を思い出しました。

高島さんはこの『橡の実』について、次のように書いています。

 昭和十年、九月なかばくらいから寅彦は寝たきりになった。もう自分では書けないのに書きたいことはあるので、小山書店という出版社の店主をよんで、口実したものを書きとらせている。もっともそれも、いくらもできないうちに死んだ。これが『橡(とち)の実』という本になった。これは、寺田寅彦が本にするつもりで書いていたものと、書けなくなって口実筆記をしたものと、それでもまだ一冊分には足りなかったために、昭和十年に書いたそのほかの随筆をつけくわえて小宮豊隆がまとめた。 p194-195

吉村冬彦寺田寅彦のこの本はこういう経過で書かれています。また林さんのブログには、この寺田寅彦の書斎の写真も掲載されています。