清流出版の名著復刻

昨年は21年ぶりに邦画の興業収入が洋画の興業収入を上回り、日本映画の復活の年ともいわれています。

昨年の公開作品総数は821本(1955年以降で最高)、スクリーン数は3062(対前年比136増。3000を超えたのは1970年以来)、入場者数は計1億6427万人余であったそうです。

今日の日経新聞の「活字の海で」には、そうした背景と関連するのかどうか、1960年代から80年代の映画論の名著が復刻されたとの記事が掲載されていました。

<バブル以降、拡散する一方の言論状況に抗うような骨のある論考は、映画の豊かさを再発見させてくれる。>

その復刻本は60年代とリードした松本俊夫の『映像の発見』と『表現の世界』(ともに、清流出版)です。なかでも、『映像の発見』は当時63年から79年にかけて、「映画青年のバイブル的存在」だったといいます。

小説や演劇に隷属する映画への辛らつな批判は、映画監督ロベール・ブレッソン箴言集『シネマトグラフ覚書』(筑摩書房)とも響き合う。

また、

全く異質だが、色川武大『映画放浪記』(キネマ旬報社)も映画を凝視する著者の肉体が見える点で共通する。

さらに、清流出版は50年代から70年代の花田清輝の映画論集を編集中。これからの清流出版の動向に注目です。

映画からビデオへ、玄人から素人へ、と映像の世界も多種多様化しているなかで、映画の本質を見直すために、かつての名著を紐解くことも必要なのではないか、そんな頃合なのかもしれません。