音楽家の文章

楽家の人は文章もうまいのでしょうか。武満徹さんにしても、高橋悠治さんにしても、今回の久石譲さんにしても。*1

今日の日経新聞の夕刊に、久石さんの「読書日記」が掲載されていました。取り上げいた本はドウス昌代さんの『イサム・ノグチ 運命の越境者』(上・下 講談社文庫)でした。

久石さんは孤独の彫刻家 イサム・ノグチさんを6年間徹底して調査し、丹念に追跡したドウスさんの仕事を「実に見事だ」と評価しています。

そして次のように言います。

「ノンフィクション文学の最大の問題は書くべき対象者と書き手の距離である。」と言い切っています。

この本は書くべき対象者と書き手の距離を一定にとりながら、あたかも0を0でないかのように書いています。

久石さんはそれを次の結語にまとめています。

「著者は日本で生まれアメリカで生活する自分の問題をイサム・ノグチに重ね合わせて見ていたのかもしれない。」

久石さんも表現者として読み書きがうまいと実感しました。

イサム・ノグチ〈上〉―宿命の越境者    イサム・ノグチ〈下〉―宿命の越境者

*1:楽家の文章と書いたら、武田泰淳さんの『政治家の文章』を思い出しました。こういう本を書いてくれる人はもういないのでしょうか。