『苦海浄土』3部作の第2部『神々の村』出版
本はいろいろなことを教えてくれます。本は新しい世界を見せてくれます。また本は驚くほどの現実を知らせてくれます。
私は今でも石牟礼道子さんの『苦海浄土』という本の衝撃を忘れることができません。同時期に見た、ユージン・スミスさんの水俣の写真とともに。
いま公害といえば、当時ほどの驚きがないかもしれません。しかし水俣あるいは水俣病は公害の象徴として長く記憶されています。
それはあまりにひどい結果を人間にもたらし、それとの戦いは長く続きました。いやまだ続いているといってもいいでしょう。
そうした水俣と水俣病をしっかりと見据え、ずっと追いかけてきたのが石牟礼道子さんです。
その石牟礼さんの著作、『苦海浄土』3部作の第2部『神々の村』が30年ぶりに完成し、藤原書店から単行本として出版されました。これで『苦海浄土』の3部作が完成しました。
ひとつの事件に関わり、その語り部として、ずっと考え続けてきた人がいるからこそ、人はその事件のことを記憶し、同じ悲劇を絶対に起こしてはならない!と思うのです。