荒川洋治「文学は実学 人生一変」

日本経済新聞9/27夕刊で、荒川洋治さんが「文学は実学 人生一変」で、文学は役立たないとの通説をくつがえし、「文学は実学である」と書いています。

そう強調するのは「文学離れが進んでいることへの危機感からだ。」そうです。そして「せめて読書が機能していた時代を記憶にとどめておくことが、文学にかかわる者の責任だと考えている。」といいます。

・・・・・文学には目に見える現実を超えた「現実」が描かれており、それを知るか知らないかで人生は一変する。文学は力を持っており、そうした実学の面にもっと注目すべきだろう。*1

 名作や要約本やあらすじ本が相次ぎ登場していることにも表れているように、本を読むことは簡単ではない。それはコンピュータゲームのように誰かが作った世界を受動的に楽しむのではなく、(想像力で)能動的に世界を作りあげる必要があるからだろう。しかし、その過程こそが人間性をはぐくむのだ。実学としての文学の魅力はもっと理解されるべきだと思う。*2

ご承知の通り、荒川さんは『文芸時評という感想』で今年の小林秀雄賞をとりました。これは産経新聞に12年間(!)掲載した文芸批評をまとめたものです。この本を読んで、もっとこのことを考えてみたいと思います。

「文学は実学」かどうか。

文芸時評という感想

*1:確かにそういう面がありますが、現実を超えた「現実」を知ることで、人生が一変するかどうか。おそらくできることはそうしたきっかけを提示することぐらいではないかと思います。冒頭に書かれていますが、いろいろな社会的犯罪が「思考力や想像力が弱くなった表れであり、原因の一つに本を読まなくなっていることがあるのではないか。」という点もそう言いきれるかどうか。それについて文学は何をしてきたのかという疑問。本を読まないことによって犯罪が起きる?・・・どうだろうという思いがあります。本を読まないのには文学の衰弱という点も考えられるのではないか。

*2:これは同感です。そのためには「実学としての文学の魅力」をもっともっと紹介することが必要なのでしょう。文芸時評はそのためのひとつの方法です。