若松英輔『言葉の羅針盤』(亜紀書房)

 虚無を感じるのは、私たちの人生に意味がないからではないだろう。今感じているよりも深く、生きる意味を感じるようにと、人生が求めているのではあるまいか。
 旅とは、芭蕉のように、遠くへ行くこととは限らない。世界は確かに広い。しかし、個々の人間が宿している宇宙もまた、はかり知れないほどに広く大きい。
 出発しなければならないのは、外ではなく、内なる旅なのかもしれないのである。P121


言葉の羅針盤