福岡伸一『芸術と科学のあいだ』(木楽舎)より

<らせんとは力を内包した運動なのだ。力が外に働けば、生命の成長そのものだ。力が内向きに向かえば、底知れぬ渦巻きの中に引き込まれることになり、その力が上向きに働けば、無限の高みを目指すことになる>。p131−132

<絵の前にじっと佇むと、見えてくるものがある。螺旋状に逆巻く水流がそのエネルギーを失うことなく、次のらせんに手渡され、連綿と引き継がれていくこと。北斎は知っていた。これこそが生命の本質であり、生きることの実相なのだと。渦は左右心房の特殊な形状から生まれる。発生した血流の渦はそのらせんのエネルギーを保ったまま、どんどん進む。らせんの切っ先はあらゆる分岐路、いかなる隘路にでも次々に飛び込んでいく。かくして私たちの身体は潤され、活かされている>。p165

<変わらないために、変わる。これが生命の本質である>。p189

<粒が絶え間なく流れながらも、私は私であるという同一性を保つ仕組み、つまり変わりつつ不変を保つのが、動的均衡である>。p247

▶付箋が林立しています。その中から気になった箇所をいくつか引用しました。やはりこれは再読でしょう。