都築響一『圏外編集者』より

 ご承知のように出版業界は冬の時代からちっとも春を迎えないまま、雑誌はどんどん数を減らし、部数を減らし、ページを減らし、増えているのは広告だけ。その現状を業界人は・・・(中略)・・・いろいろなもののせいにする。シャッター商店街イオンタウンを、町の古本屋がブックオフを自分たちの商売不振の言い訳にするように。
 でも、けっきょくそれは編集者のせいだ。「ケネディを殺したのはお前や俺だ」とミック・ジャガーが歌ったのは1968年だったが、それから半世紀近くたったいま、出版を殺しているのはその作り手である僕ら編集者だ。[P6] 

 インターネットがすべてを変えてしまった。アーティストとリスナーがSNSで直接つながれて、世界のどこでも同時に画像や動画や音源が共有でき、参加もできて。ワンクリックで日本中のどこにでもAmazonの箱が届いて、そこにはもはや「東京」と「地方」のタイムラグも、「専門家」と「一般人」のタイムラグも存在しない。
 そういう時代に僕らはもう、メディアにトレンドを教えてもらう必要はない。メディアが特権的に情報を収集して、「流行」として発信できる時代が、とっくに終わってしまっていることを、既存のメディアの人間がいちばんわかっていないのかもしれない。
 いちばん大切なことに、いちばん目ををつぶろうとしているテレビ局。エコとかいいながら、いまだに何百万部という印刷部数を競う大新聞。意地悪の黒い塊のような週刊誌・・・・・トレンディだったはずのメディアが、いちばんトレンドから遅れてしまっている皮肉な現実。[P255]

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圏外編集者        ROADSIDE BOOKS ── 書評2006-2014