最善の生存戦略 

つまり多様性こそ、イノヴェイションを生み出す源泉となるのだ。例えば、ミジンコは環境が安定しているときはひたすらクローンを生産する効率的な無性生殖を行うのだが、環境が悪化すると、有性生殖に切り替えることが知られている。変化する環境のなかでは何が生存に有利かわからないため、配偶者を探すという手間をかけてでも、多様な遺伝子を生み出す有性生殖が有利になるのだ。環境が不安定になると、それまでのやり方が通じなくなってしまうのは、ミジンコも人間も一緒だろう。だからといって、新しいやり方が通じるかは、誰にもわからない。それゆえ、多様性という環境を用意し、さまざまな組み合わせを試してみることが最善の生存戦略になるのだ。

石川善樹「グーグルを生み出さない」英国式イノヴェイションに学ぶこと(『WIRED』VOL.16)より

WIRED(ワイアード)VOL.16 [雑誌]