丸谷才一さんの本から

まず。文章を書く上で真似るということ。

<型にのつとつて書くなどと言ふと、それでは先人に追随するだけではないか、模倣にすぎないではないかとそしる人もゐるかもしれない。しかしこの非難は二重に間違ひを犯してゐる。第一に、伝統がないならばそもそも我々の文化は存在しないからであり、第二に、学習し模倣してもなほかつおのづから出て来るものが真の個性だからである>。 丸谷才一文章読本』(中央公論

最後の<学習し模倣してもなほかつおのづから出て来るものが真の個性>がいい。だから、大いに真似ようではありませんか。自国の伝統文化が背景に、学習と模倣を通して、自ずと個性が生成されます。いや、創造されるといってもいいのかもしれません。

次に。最初の一冊をどうやって手にするか。

<コツがないわけじゃない。コツの一つは書評を読むことですね。そうすれば、かなり本選びのカンがわかります。
(中略)
うんと感心した書評があったら、読んでみる。そして、もう一つ大事なのは、その書評を書いた人の本を読んでみることです。この二つをやるととても具合がいい。別の言い方をすれば、ひいき筋の書評家を持つことですね>。 丸谷才一『思考のレッスン』(文藝春秋

わたしにとって、その「ひいき筋の書評家」のひとりが丸谷才一さんです。

文章読本 (中公文庫)         思考のレッスン (文春文庫)