藤原新也さんの『メメント・モリ』

本の整理をしていて、懐かしい一冊を見つけました。藤原新也さんの『メメント・モリ』(死を思え)情報センター出版局です。

この写文集はそれほどページ数が多くないなので、写真を見合わせながら一気に読むことができます。しかし、書かれている内容は実に重い、そして深い。

この本を開くとなにやら色めき立ち、文章は近くから遠くから、聞こえる読経のようであり、写真は始まりの終わりの、どこかで見た情景のようでもあり・・・・・。

そこでエロスとタナトスの微妙な均衡が崩れ、生に離陸するのか、死へ着地するのか、情動が有限の不均衡運動を始めます。

(そして精神は無限の均衡運動を・・・・・)

そしてその文字が直立し始め、その風景が拡散し、一点に収斂し始めます。その一点、言うまでもなく、生か死か。

例えば。

冒頭の一文。<ちょっとそこのあんた、顔がないですよ>。三途の川で声をかけられたような・・・・・白と黒の葬列が近づく遠ざかる・・・・・。

川のこちら側から、向こう側から、何が見えるのか。見るのはあなたです。

メメント・モリ