松浦弥太郎『暮しの手帖日記』を読んで

今年3月に「暮しの手帖」の大橋鎮子さんが亡くなりました。現在は松浦弥太郎さんが「暮らしの手帖」の編集長をやっています。その日々を綴った本が『暮しの手帖日記』(暮しの手帖社)として出版されました。

その松浦さんの『暮しの手帖日記』を読んでいます。松浦さんは「大橋さんから受け継ぐ精神」について、「4世紀34号 編集者の手帖」でこう書いています。

<大橋にあるのは、強い好奇心と探究心。どんなことにも感動できる初々しい心。そのような暮しに対するゆるぎない中心が、今でも『暮しの手帖』を作っています。そうして思うのです。さて、自分の中心にあるものは何でしょう?と。大橋から受け継ぐ精神に、私たちの世代が足していくべきことを考えさせられます。ひとつ思うのは、変わらないために変わり続けていくことです。それは常に、新しさへのチャレンジです。そう心して今日も仕事に向かいます>。

人はまず文化を受け継ぐだけで精一杯になります。まして新しい何かを創り出すことは至難です。伝統の継承ということがいかにむずかしいか。「暮しの手帖」であればなおさらです。

だからこそ、「変わらないために変わり続けていくこと」が大事なのです。そして松浦さんが言うように、「私たちの世代が足していくべきこと」を創り上げること。いま松浦さんの編集長としての力量が問われています。

しかし、この二点が揺るがない限り、雑誌業界は視界ゼロ、逆風の状況ですが、『暮しの手帖』はその風雨にも耐えていけるのではないか。いや、そう期待したいと思います。

暮しの手帖日記        暮しの手帖 2013年 12月号 [雑誌]