山下武『書物万華鏡』 (実業之日本社)より

 たとえば、『リラダンマラルメ往復書簡集』ー 新しく蔵書に加わったこの一冊を書架に置くときほど、ぼくが衷心から愉悦を感じることはない。そして、さらにこの書物が「未聞の詩であり、驚くべき完璧さに到達したもの」とマラルメをして讃嘆せしめた『残酷物語』のとなりに並ぶのをながめるとき、ぼくの胸はまたも妖しい感動に打ち震えるのである。
 真の書物とはこのようなものを指すのではないだろうか。(p276)