百円本でもドラマに出会う

 今回も古本屋で手に入れた一冊の本から話を始めたい。実を言うと、もう何年もテレビと新刊書店には無縁になっている私である。本との出会いは古本屋に限られる。書物の真価は新しきが故に尊しとせず、時間の淘汰に耐えて顕現するものである。
 とりわけ私が愛着するのは、気のきいた古書店なら店先に並べてある百円均一本というやつで、そこから随時随意に引き抜いた無限定の雑本にこそ、読書という行為の無償の本懐があると知らねばならない。p16

すでにツイートで、田中眞澄さんの『本読みの獣道』を読了したことは書きました。そして、<百円本でもドラマに出会う>という一文を引用して、だから本好きは百円本がこの上なく好きなのです。

まず古本屋に行く。百円本の箱や棚を見る。そのなかから雑本(良本)を選ぶ。あれこれ物色。買うかどうか悩む。本と本のつながりを考える。欲しいかどうか、確かめる。そして納得して買う。

たかだか百円本というなかれ。こうした百円本の選び出しのなかに、本好きの無償の喜びがあります。納得の一冊を見つければ、それだけで大いなる満足! その感慨のために、日々古本屋めぐりをしていると言ってもいいのかもしれません。

おそらく端から見れば、なんだろう?と思うでしょうが、好きこそものの上手なれ。百円本のなかにドラマがある!から、田中さんのように、労を惜しまず、ふるほん行脚をするのです。

本好きにとって、古本屋めぐりは、楽しく、やめられない道楽です。自ら楽しむはいいのですが、果たして道を解しているかどうか・・・。なんて面倒くさいことはさておき、楽しむときは楽しめ、です。