湯川豊『本のなかの旅』を読んで
湯川豊『本のなかの旅』(文藝春秋)を読了。湯川さんは国内外の旅人を18人選抜し、その各自の旅について簡潔明瞭に書いています。これは同社のPR誌「本の話」に掲載されたもので、それに「大岡昇平」を加えて出版されました。
18人の旅人は次の通り。
宮本常一 内田百輭 ブルース・チャトウィン 吉田健一 開高健 ル・クレジオ 金子光晴 今西錦司 アーネスト・ヘミングウェイ 柳田國男 田部重治 イザベラ・バード 中島敦 大岡昇平 アーネスト・サトウ 笹森儀助 菅江真澄 R・L・スティヴンスン
湯川さんは<旅の話を読むのが好きだった、といえばそれまでのこと。ただ、私にとって旅の本のなかには、いつも謎めいた魅力と問いかけがあった。それが具体的にどのようなものだったのか、書くことによってはっきりさせたいという気持が、この本の動機になっている>と書いています。
それにしてもそうそうたる方々です。なかでも、ル・クレジオなど、本当に久しぶりな作家です。例えば同書からそのル・クレジオの言葉を引用します。
<動物なくして、人間とは何なのか。すべての動物たちが消えてしまうなら、人間は心に非常なさびしさを感じ、それで死んでしまうだろう。なぜなら、動物たちに起こることは、やがては人間にも起こるのだから。すべては結ばれているのだ>。p77
<夜、書き、夜、読むことは、あらゆる旅のうちで最も驚くべき、もっとも簡単な旅だ>。p79
こう書き記していると、ル・クレジオの本が読みたくなりました。同書で湯川さんも取り上げている『歌の祭り』訳者 管啓次郎(岩波書店)を図書館に予約しました。今日の、私の「もっとも驚くべき、もっとも簡単な旅」もそろそろ終わりにしたいと思います。