立花隆『立花隆の書棚』より

立花隆さんは『立花隆の書棚』(中央公論新社)で「紙本と電子本のちがい」を次のように書いています。私も紙本の世界はまだまだ続くと思いますが、新しい電子本の世界にも興味があります。

これから本というものがどう変わっていくのか、電子本の独自の世界とは何なのか、それに伴うコンテンツは・・・・・ かたちの上で好き嫌いや長所短所もありますが、それ以上に新しいメディアのこれからを見ていきたいと思います。

 ぼくを含めて、オールドジェネレーションにとっては、電子本より紙本のほうが扱いやすい。心理的にフィットする。紙本じゃないと、自由自在に線を引いたり書き込みができません。電子本でも同じようなことはできることはできますが、実際にやってみると、やはり紙本のほうがずっと融通性が高い。紙本であれば、自分流のやり方で何でもできるが、電子本のそれ的な機能だとそのフォーマットに従わなければならず、自由度が低いわけです。そして、紙の本には何といっても、存在感がある。手ざわり、質感、重量感。それに、デザイン、造本、紙、印刷などなど、紙本ならではのクオリア的要素が何とも言えない。もちろん、くだらない本は、電子本でも紙本でもいいのですが、内容がいい本! これは紙本で読みたいと思います。本というのは、テキスト的コンテンツだけでできているものではありません。いい本になればなるほど、テキストやコンテンツ以上の要素が意味を持ってきて、それらの要素がすべて独自の自己表現をする、総合メディアになっていく、そういう本の世界が好きだという人が、本を一番購読する層でもあって、本の世界を経済的にも支えている。この構造が続く限り、紙本の世界はまだまだ続くと思います。(p219−220)


ぼくはこんな本を読んできた―立花式読書論、読書術、書斎論      ぼくの血となり肉となった五〇〇冊 そして血にも肉にもならなかった一〇〇冊      立花隆の書棚