丸谷才一さんの池内紀評

いつか読んだ本のなかで、印象に残っている箇所があり、それをふと忘れてしまい、またあるときふと思い出すことがあるものです。その時はなぜ忘れてしまったのか? またなぜ思い出したのか? わかりませんが、・・・・・ 。

その記憶が丸谷才一さんの池内紀評でした。

丸谷さんの書評は和物洋物と問わず、広く深い博識に裏打ちされた、メリハリのきいた書評です。その丸谷さんが池内さんに対して、大変高い評価をしていたので印象に残っていました。

その丸谷才一さんが池内紀さんをどう評価したか。

冒頭< 注目に価する才人が出現した>と書き、以降どういう所がいいのかについて評しています。

< この若いドイツ文学者の勉強ぶりは大したものだ。しかし、それ以上に感心するのは、文体に活気があって、小気味がよいことである。もちろん資質もある。しかし、いろいろの本で得た知識がすっかり消化されて、自分のものになってゐるからこそ、これだけ上質の散文で、威勢よく語ることができるのだらう>。(『快楽としての読書 日本編』ちくま文庫)p63

こう書いた丸谷さんは今はなく、また池内さんも今年73歳です。

思えば、丸谷さんの評価を参考に本を読んできた気がします。私にとって、丸谷さんの書評はいまでも本の森を歩くための道案内です。

では丸谷さんの何を読んだらいいのか。

数多くある本のなかから、私は『快楽としての読書 日本編』と『快楽としての読書 海外編』の2冊をおすすめします。まずはこの入り口から。

快楽としての読書 日本篇 (ちくま文庫)        快楽としての読書 海外篇 (ちくま文庫)