虫明亜呂無著『女の足指と電話機 回想の女優たち』

虫明亜呂無著『女の足指と電話機 回想の女優たち』(清流出版)を読み始めています。その冒頭のエッセイ「スポーツを越える美学を 市川崑東京オリンピック』」はこう始まります。

<たとえば、色彩であり、光であり、肉体である。
 瞬間に、色が爆発し、閃光がきらめいた。その光はひたすら、ゴールをめがけて突きすすみ、十秒のうちに、澄みきった空のなかに、音もなくとびちっていった。
  光、そのものの、するどく、金属的な、めくるめく残像だけがのこった。光、のほかにはすべてが静止していた。呼吸すら>。

スタート、スピードアップ、そしてトップスピードへ。虫明さんの文章はパセティックな軌跡を残して、快走していきます。さらに加速して、思考のスピードが肉体のスピードを超える・・・・・。そんな瞬間を見てみたい。

スポーツのあの陶酔を、熱烈にかつ冷静に表現した人はまだいません。

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