多木浩二『視線とテクスト』


視線とテクスト

一昨年に八十二歳で亡くなった著者の、いまでは眼に触れにくい七〇年代の初期評論を中心に集めた全七章立ての浩瀚(こうかん)な書だ。著者は、近代の日常生活に滲(し)みこんだ無意識の視線や知覚のありようを探るために都市論やメディア論、視覚表現や映像イメージ論などに広く分け入ったが、本書は建築とデザインの領域に絞っており、いわば多木批評の出発点を示す企図がある。

(美術評論家・武蔵野美大教授 高島直之)