吉見俊哉さんの『ポスト戦後社会』

今日、吉見俊哉さんの『ポスト戦後社会』(岩波新書)を読みました。これは『幕末・維新』から始まり、『日本の近現代史をどうみるか』で終わる「シリーズ日本近現代史」全10巻の9冊目の新書です。

吉見さんは戦後社会を1945〜70年代前半、ポスト戦後社会を70年代後半〜現在と位置づけ、ポスト戦後社会の歴史について冷静に分析し、広く深い知見を展開しています。そして、その歴史の中で、<いかなる新しい「始まり」が可能なのか>を考えます。

例えば、永山則夫宮崎勤の犯罪を、時代背景と犯罪実態の両面から比較対照しています。また95年問題といわれる、阪神・淡路大震災での危機を考察し、オウム真理教事件の真意を追求していきます。

吉見さんは歴史の出来事の表層をなぞるだけの思考ではなく、深層まで考えた思考が実践しています。ただ調査、分析、解説だけでなく、さらに深く考える、吉見さんの歴史的洞察力に教えられるところ大でした。

歴史の出来事は年月とともに忘れられ、忘却の彼方に消えていきます。過去を、現在を、未来を考えるために、せめて同時史は記憶に留めておきたい。だからこそ、この新書を繰り返し読むことが必要だと思いました。

歴史は解答を提示してくれませんが、考えるヒントは暗示してくれます。そのヒントから常に新しい解答を考え出さねばなりません。その絶えざる繰り返しのなかに、正答への道があります。

( そう信じたい。しかし、人はなぜ歴史の教訓を後世に活かせないのだろう? 同じことを悲劇として、喜劇として繰り返すのだろう・・・ )

ポスト戦後社会―シリーズ日本近現代史〈9〉 (岩波新書)        親米と反米―戦後日本の政治的無意識 (岩波新書)