森達也『虚実亭日乗』(紀伊國屋書店)

森さんの新刊です。その内容は【本の話をしようよ】の記事で次のように書いています。

「僕は『正義』を信じない」。オウム真理教信者の日常を追った映像ドキュメンタリー『A』など、既存の価値観を揺さぶる作品を発表し続ける森達也さん(56)は、こう言い切る。その姿勢が生み出したのが、『虚実亭日乗』。一見ひょうひょうとしたエッセーに見えるが、巧妙に真実と虚構が織り交ぜられている。「あなたが見ている世界は本当に真実か」−。読む者に問いかける「フェイク・ドキュメンタリー」だ。

最後では次のようにまとめていますが、この箇所は考えさせられました。

「情報化社会の弊害は、グレーゾーンや『間』を消してしまうこと。インターネットも、一見世界を広げているように見えるけれども、実は自分の興味のあるものしか見えなくしている。固定化、限定化が進んでいる。限定しちゃうと、もったいない。いろんな視点があれば、いろんな世界が広がる。この本では、『現実か、フィクションか?』と疑いつつ、その『間』を楽しんでもらえれば」

情報化は灰色を消し、個別の世界しか開示しない。見る視点を固定せず、流動にする。固定点を持ちつつ、浮動点を持つということか。そして、視点を変えれば、世界も変わる、か。

虚実亭日乗