後ろ向きで未来へ

昨日書店でもらった岩波書店の『図書』4月号を読んでいて、「こぼればなし」に書いてあったことをメモしました。

私は立ち止まり、その記事を読み、そこで考えました。しっかり考えることを心のどこかで投げ出してはいないだろうか。

この記事は、私たちの精神が、私たちの社会が、変わったのかどうか、を強く問いかけています。

大震災を経て、私たちは「経験」を回復するきっかけをつかんだでしょうか。「安楽」への狂おしい追求と「安楽」の喪失への焦だった不安」に満たされた社会状況は変わったのか、どうか。「慎みや抑制や克己などの結果現れる自己克服の「喜び」」がまったく無くなり、本能である「喜びの衝動」が「他人を「傷つける」喜びとなって現れる」攻撃的精神状況は、ネット社会の病理としてすでに十分実現してしまっているのですが、それは変化してのか、していないのか。

その問いかけに対しての返答があるのかないのか。それがないまま、退行し続けるのでしょうか。

いま私たちが言えることは、後ろ向きで未来へ、です。

*引用の出所は藤田省三氏の『全体主義の時代経験』(みすず書房 1995年)です。

全体主義の時代経験 (藤田省三著作集 6)