装幀家 恩地孝四郎の五ヶ条

装幀家恩地孝四郎氏が自戒としてあげられた五ヶ条がある。
(1)装本は何よりも内容と合致すべきだ。
(2)何より質実であるべきだ。豪華や飄逸や諧謔のうちにも、それはあるはずである。衒わざることが何より好ましい。
(3)過飾を戒心すべきだ。過飾を課せられた場合は、過飾のなかに素朴を盛るの心を必要とする。
(4)①材料を無理な用い方をせぬこと。
   ②工程の自然な遂行を期すること。
   ③工人の技の程度に立つこと。
   (但しこのいずれも、殊に③を余り安易に承認する時は、技術の低下を来たす)
(5)視覚の外、触覚、重覚、嗅覚、その他の感覚をも加えるべきである。時には聴覚も。
小山俊人『本が生まれるまで』築地書籍 p151-152


恩地孝四郎 装本の業<新装普及版>
 
恩地邦郎 編『恩地孝四郎 装本の業』
三省堂(新装普及版)