井田真木子の詩集『雙神の日課・詩』

昨日ブック・ダイバーに補充の本を持って行ったことを書きました。8月のブック・イベントはやはりむずかしいのかもしれません。小売でいう、2・8はダメ(2月・8月は売上が上がらない)という定説は正しいのでしょうか。

東京古本市予定表を見てもらってもわかる通り、今年はデパートでの古本市が多かった気がします。催物としての古本市は集客できる企画?として実施されました。しかし、その結果はどうでしょう。

小田急百貨店で行われた三省堂主催の古本市に行ってきましたが、出店の店主の方が思ったより反応が悪いと言っていました。それはその店の状態で、他店はまた違うかもしれません。

行った日は平日でしたが、会場はかなり閑散とし、商品もかなりまちまち、値段もばらつきがあり、若干高め。残念ながら、今回の古本市では掘出物を見つけることができませんでした。

最近はあまり当たりが出ていないので、ダイバーへの補充のあと、いつも立ち寄る神保町のお店を見て廻りました。

文庫・新書の安い店は今回ハズレ。コミガレもほしい本があったのですが、まとめて3冊にならず。田村の100均箱もなし。いつもなら、必ずといっていいほど、何冊か購入するのですが ・・・・・ 。

しかし、その日は田村書店の前に詩集の箱が4箱出ていました。その箱の中を見ていると、無名の詩人たちに紛れて、「井田真木子」さんの詩集を発見。あの井田さんか。半信半疑で、その詩集『雙神の日課・詩』(無限)を拾いました。

背表紙はヤケ、ビニールカバーはイタミあり、それ以外は問題なし。奥付の著者紹介を見ますと、次のように書いてありました。

井田真木子
1956・7・19生
(現住所)
神奈川県鎌倉市雪ノ下 1-10-5

井田さんについてWikipediaでは次のように書いてありました。

<井田 真木子(いだ まきこ、1956年7月19日 - 2001年3月14日)は、日本のノンフィクション作家。
神奈川県生まれ。慶應義塾大学文学部哲学科卒業。(早川書房勤務を経て、81年からフリーランス・ライターに。)1991年『プロレス少女伝説』で大宅壮一ノンフィクション賞、1992年『小蓮の恋人』で講談社ノンフィクション賞を受賞、将来を嘱望されたが、44歳で急逝した。>
※( )内は店主挿入。

また、「井田真木子著作目録」を見ますと、何とこの詩集が一番最後に掲載されていました。

2002.09 『お笑い創価学会 信じるものは救われない』共著(知恵の森文庫)
2002.02 『かくしてバンドは鳴りやまず』(リトル・モア
2002.02 『ルポ十四歳 消える少女たち』(講談社文庫)
2001.04 『フォーカスな人たち』(新潮文庫
2000.07 『お笑い創価学会 信ずる者は救われない』共著(光文社)
1999.07 『ノンフィクションを書く!』井田真木子他(ビレッジセンター出版局)
1998.05 『十四歳 見失う親消える子供たち』(講談社
1998.05 『いつまでもとれない免許 非情のライセンス』(集英社
1997.12 『もうひとつの青春 同性愛者たち』(文春文庫)
1995.10 『小蓮(シャオリェン)の恋人 新日本人としての残留孤児二世』(文春文庫)
1995.04 『旬の自画像 2チャンネルの女から永田町の男まで』(文藝春秋
1994.01 『同性愛者たち』(文藝春秋
1993.10 『プロレス少女伝説』(文春文庫)
1992.07 『小蓮(シャオリェン)の恋人 新日本人としての残留孤児二世』(文藝春秋
1991.06 『彼女たち(ワーキング・ウーマン)のホ−ム・スウィ−トホ−ム(Hen party series)』(弓立社
1990.10 『プロレス少女伝説 新しい格闘をめざす彼女たちの青春』(かのう書房)
1990.04 『温泉芸者一代記(女性の世界シリーズ)』(かのう書房)
1989.09 『温泉芸者一代記 湯河原の芸妓おかめさんの話しより』(かのう書房)
1977.   『街 詩集』(無限)
1975.11 『雙神の日課・詩』(無限)

生まれも神奈川県、詩集の発行年月も同じ。推定すると、これは井田さんの処女詩集でしょう。生年から発行年を差し引くと、なんと19歳の詩集です。

さらに井田さんのことを調べていると、「井田真木子文学缶」というブログを見つけました。最新の記事「井田真木子の草野心平論」には、

<東京の古本屋で、井田さんの詩と書評が掲載されている1977年刊の『無限ポエトリー』を発見した。ずっと探していた『無限』の別冊であるが、定価千円、270ページにもなる立派な詩誌だったので驚いた。百円になっていたので、喜んで即購入した。彼女の掲載詩は、のちに『街』としてまとめられる連作の中のひとつであり、書評のほうは「草野心平の思想世界」というタイトルであった。>

と書いてありました。当初の2冊の詩集は「無限」から発刊されていることを考えれば、詩人としての井田さんの「無限」との関わりもわかります。やはり、と推定から確信に変わりました。

井田さんの草野心平さんについての最後の文章は次のように結ばれています。

<「作者が大地に絶えず埋め、絶えず蘇生させているものは彼の生命であるだろう。そして人間はこのような酷烈な、孤独にみちた、自らが選んだ運動をもってはじめて生と死、現実と幻を同一の平面で、同じ時、同じひとつの目をもってみることが可能になるのである」>

そしてブロガーは次のように自らの記事を終えています。

<このような草野心平論は、そのまま井田さんの生涯をもなぞっていると言ってよいのではないか。この時井田さんは弱冠二十歳。生と死、現実と幻を同一の平面で見続ける、酷烈な、孤独に満ちた生涯を自ら予見していたのである。>

まさにその通りです。これを読んで、改めて詩人井田真木子からノンフィクション作家井田真木子への道をたどりたい気がしました。またこういう本を神保町で拾えることに大いに感謝をしたいと思いました。





            もうひとつの青春―同性愛者たち (文春文庫)


フォーカスな人たち (新潮文庫)      ルポ十四歳―消える少女たち (講談社文庫)      かくしてバンドは鳴りやまず



→古本 四谷書房


2010年東京古本市予定表