小さなメディアに注目を

今日書店に立ち寄りもらってきたのが、40周年を記念しての「新潮選書フェア」の冊子と解説目録。この冊子には、新潮選書「スタンダード&最先端フェア」について書いてありました。そして「知は動いている」として、スタンダードな書籍と最先端の書籍を紹介しています。

このフェアの冊子の表紙で分子生物学者の福岡伸一さんは次のように言っています。

<かつてレイチェル・カーソンはいった。いちばん大切なもの、それは目をみはること。私たちは、今、まさに動いていることに目をみはる。>

この文章のことばのなかで、「目をみはる」ことに「センス・オブ・ワンダー」というルビがふられています。これで「目をみはる」意味が十分理解できると思います。

この冊子の中には新刊書評も掲載されています。冊子はそれなりに読み応えがあります。こうした小さなメディアから考えるヒントを、動くパワーをもらうことができます。また素晴らしい文章に出会うこともあります。

その典型が新潮選書の新刊 原武史重松清団地の時代』の書評に掲載されていた一文です。北田暁大さんが原武史さんをずばり評していました。これで、原さんとその著作について知ることができます。

< 原武史は、そうしたメディアとしての歴史を、記録と記憶をもとに再現する名手である。『滝山コミューン一九七四』は、自身の記憶と、残された記録、インタビューを総動員して、いまだ過去になりきっていない団地的な日常世界の政治性を見事に描き出していた。記憶と記録が入り乱れている近過去を振り返ることには、独特の甘酸っぱいノスタルジーと生々しい体験への抵抗作用(総括)が伴う。そのいずれにも回収されない緊張感を原の一連の著作は提示している。>

こうして配布されるものの中にも、いい内容のものが多々あります。小さなメディアだからといって侮るなかれ!なのです。

センス・オブ・ワンダー          団地の時代 (新潮選書)