古本屋の在庫管理

出久根達郎さんの『人は地上にあり』(文春文庫)を読んでいると、「あとがき」に古本屋の在庫管理についての話がありましたので、ここにメモしておきます。

 書棚の本は、どなたも覚えがあろうが、大体、目の高さの位置に*1、大事な本と並んでいる。無意識に、そのように並べるらしい。
 古本屋の棚も、そうだ。こちらは商売だから、大事な本というより、売れ行きのよい本、あるいは主人が売りたく思う本、を陳列する。売れ残ると、一段ずつ下の棚に移る。つまり、降格*2である。書棚の最下段が身の行きどまりで、ここでも売れないと、古本屋の場合、店頭の百円均一台に投げ込むことになる。古本の掘り出し物は書棚の最下段で*3見つかることが多く、古本あさりの穴場となる。

そしてさらに出久根さんはいいます。「面白い本は、書棚の中央でなく、片隅に息をひそめている、と言いたいのである。」ひそめている息を聞き取るためには、目だけでなく、耳も大事になります。

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▼四谷書房のサイトは http://yotsuya-shobo.com/ こちらから。

*1:小売の陳列では、これをゴールデン・ゾーンと呼んでいます。

*2:この降格のやり方はたいへんわかりやすく、在庫管理しやすい段違え方式です。

*3:ここがポイントです。意外と最下段を見過ごしてしまうことが多いので、要注意!

*4:四谷書房 私のような戦争を知らぬ世代が、江戸の名残りの文芸を、感心して読むのである。人は書物によってしか生きないことがわかる。書物によって何百年も生き続けることがわかる。/ 「人は地上にあり」/ 地上に生きている者が、書物に生きる人を読むのである。/ 「人は書物にあり」