由良君美『みみずく英学塾』から

<幻想>と<現実?>と<行為>・・・・・この三者をむすぶ臍の緒は強靭である。文学の場合、この三位一体の関係は、<作者>ないし<読者>を間にはさんで<ミメーシス>と<ファンタジア>を結ぶ三角形をつくり、想像力を刺激する。当然そこには、なんらかのユートピアが常に関与しないわけにゆかない。そして天国幻想は<失楽園>の幻滅の認識から、人間を<復楽園>の行動に駆る不断のエネルギー源なのである。<アッサシヌス>もコロンブスもベイコンも文学者も、この幻想の三角形を共有することにおいては、同じである。

(由良君美『みみずく英学塾』(青土社)「想像力とユートピア」p11)